何故チューンは必要か?

何故エッヂを研ぐのか?  何故ワックスを塗るのか?
エッヂを研ぐ  滑走面のケバ立ちとワックスの関係  滑走面の汚れとワックスの関係



様々な雑誌で掲載されているチューンナップ方法。しかしこれはあくまでも手順を追っての解説。
何故このような作業手順が必要なのか、しっかり知っておかないでチューンナップしても、みようみまねの自己満足にしかなりえないのです。

これから何故エッヂは研ぐのか?何故ワックスを塗るのか?を解説していきますが、この作業を行うにあたって大前提となるのが滑走面のフラットです。滑走面がフラットになっていなければいくらエッヂを研いだりワックスを塗っても効果は上がらないと思ってください。

この滑走面をフラットにする作業は、手作業では実に難しく時間がかかります。専門チューナップショップに依頼することがベストと言えます。

何故フラットが必要かという部分がありますが、これはまた機会があったらお話したいと思います。


何故エッヂを研ぐのか?

エッヂの役割は大きく言うとスキーのコントロールと雪面へのグリップを役目としています。
ジャンプスキーはエッヂが有りません。これはただまっすぐ滑ればいいだけのものだからです。
近年カービングスキーのおかげでスキーの舵取り、ターンの構成が、カービングスキー出現以前に比べ比較にならないほどターンをスムーズに行え、半オートマティックに、またずらすことなく?スキーが曲がってくれるようになりました。
しかしながらいくらカービングのレールターンを目指していても、現実にはターン動作中スキーのズレは生じており、このズレを軽減することは出来ますが防ぐことは至難の技といえます。
また、多少のズレが伴わないと人間の体では限界が生じ転倒や事故につながってくるのです。
この相反したスキーの動きを「エッヂを研ぐ」という作業で、解消し可能に近づけてあげるのです。


さて本題に入ります。
雪は空気中の水が凍って結晶となりスキー場に降り積もります。
結晶はそれぞれに硬さを持っており、この硬い結晶の集合体の雪面を滑るという行為自体でエッヂは摩擦で研磨されてしまいます。そして滑走中に研磨されていくエッヂは次第に角が取れ、丸くなります。

エッヂはスキーから露出している面が2面あります。
ひとつはベース側、もうひとつはサイド側です。
この二面のわずか数ミリのエッヂは、それぞれに役割をもっています。

まず、ベース側のエッジは主にスキーのコントロールを司っています。
車にたとえるとハンドルの役目をしているものと思って下さい。
スキーを傾けプレッシャーをかけて、スキーをたわませることによりターンの大きさや、方向が決定されますが、最終的には車のハンドルのあそびと同じでスキーのずれにより微妙なコントロール、あるいは修正を行いながらターンを仕上げていきます。
F1のような車はハンドルのあそびが無く、タイヤに対して敏感に反応させるようになっています。
ところが一般車はハンドルにあそびをもたせ、余裕を持って切り返しが出来るような仕組みになっています。
スキーの場合、この車でゆうハンドルのあそびがベース側エッジのビベリングにあてはまります。

エッヂを研ぐ(ビベリング)
滑走面とエッヂ面が同じ高さのものを少しエッヂ面を低く研ぎ上げる作業をビベリングといいます。
ビベリングが施されていないベース側エッジ面が、滑走面と同じ高さの場合は、ターン始動時スキーを傾けると同時に、すぐにエッヂが雪面をとらえ敏感に反応してしまい、スキーコントロールが行いづらく、パワーの必要なものとなってしまいます。
ビベリングをすることにより、ターン始動時、スキーの傾け動作を行うときエッヂの雪面のとらえがややルーズになり、スムーズにターンの始動を行え、あまりパワーを必要としない自然な加重だけでのスキーのたわみ、ターンに結びつけることが出来ます。このビベリングされたエッヂは(エッヂを研ぐ)という作業によって作ることが出来ます。

次に、サイド側のエッヂ面の役割ですが、車でゆうとタイヤに値します。
しっかりとサイド側エッヂの角の、でていない丸くなったエッヂは、溝の無くなったツルツルのタイヤと同じです。
傾け動作によって傾いたスキーは、サイド側エッヂ面の角がしっかりしていれば、斜面下に落ちようとする力に反して、目的の方向にしっかりグリップし進んでくれます。
この時サイド側エッヂ面が丸いと、雪質によってはエッヂの雪面に対するグリップ力が弱く、落下しようとする力に負けズルズルとスキーがずれ、自分が描こうとしたターンの目的の場所にスキーをもっていけなくなってしまいます。
タイヤの場合も同じで、ツルツルのグリップ力の無いタイヤだとオーバーランして事故につながりかねないのもおわかり頂ける事でしょう。
サイド側エッヂ面を研ぎ、エッジの角をしっかり出してあげることにより、ずれの少ないグリップのきいたターンを作り上げることが出来ます。
余談ですが、サイドエッヂのグリップと、技術の連動を見てみるとグリップ力が逆に大きすぎるとスキーは走らなくなり、タイムを競う競技スキーのような場面では致命的なミスとなってしまいます。
このグリップさせながらスキーのスピードを軽減させず走らせるとゆう動作はスキーの技術で補ってあげます。
また最後に、エッヂは滑走性においては滑走面とは違った性質のものではありますが、なめらかに研ぎあげてあげることによって滑走性を妨げないものになります。


なぜワックスを塗るか?
ワックスの大きな目的は、スキーの滑りを良くするために有ります。
その中でワックスを塗る目的として、いくつかの大きな事項があげられます。

一つ目は先に述べた雪の結晶に関係します。
雪は気温が低いほど結晶がしっかりしていて、固いものです。
気温の低いスキー場での滑走はスキーがあまり滑らない経験もあると思います。
これは気温が低いほど雪の結晶が小さな小さな石ころと同じように固く尖っていて、このとげとげが滑走面に食いつき摩擦が大きくなって、滑らなくしているのです。
これを滑る滑走面にするには固い低温用のワックスを滑走面に塗ってあげます。
固いワックスを塗ることにより、滑走面自体が固い膜に覆われ、結晶との摩擦係数が低くなり滑走性が上がります。

二つ目は逆に春先のような水分の多く含んだ雪の時です。
これは滑走中、滑走面と雪面の間に摩擦が生じていてその摩擦熱で瞬時に雪が溶け、水が発生するとゆうメカニズムにより、発生した水が表面張力を引き起こし滑走面と雪面をくっつけてしまう現象を引き起こします。
春先の水分の多く含んだ雪上での滑走は、山頂より下界に滑り降りるほどブレーキが掛かる現象があると思いますが、これが原因となっております。
この状況を解決してスキーを滑らせるには、水はじき効果のあるフッ素系のワックスを塗ることが有効になります。
フッ素系のワックスは滑走中、摩擦熱で発生した水分を細かく球状に分散させ、表面張力を軽減させる効果が有ります。

話しは外れますが、この水はじきと連動して更に効率よくその水をはじき出し、滑走性をあげる方法があります。これがストラクチャーと呼ばれるものです。
これは、滑走面に故意に規則的な溝をつけ、水の流れをスムーズにしてあげる効果があります。
たとえてゆうと、道路わきにある側溝のようなものです。
フッ素系ワックスの効果により球状になった水は、この溝をつぶされること無く転がりスキーから抜け出ます。
このメカニズムにより、スキーがスムーズに滑ることが出来ます。
このストラクチャーはストーンマシーンというマシーンにより、規則正しい溝を滑走面に刻み込み生れます。
しかし、このストラクチャーもワックスと連動しているため、ワックスがしっかりと施されていないと溝をつけた分、面積が大きくなっているので、摩擦抵抗の起きる面が大きくなるので逆に滑走性は落ちてしまいます。
いくら最新のマシーンで、今流行のストラクチャーを滑走面に入れてもワックスがおろそかになるとこのストラクチャーは無用の長物になってしまうのです。

ストラクチャーだけの話しになりますが、最近日本に数台しかない最新ストラクチャーマシーンが雑誌に取り上げられていますが、これはあくまでも世界のトップレースシーンでテストされているだけで、いまだ何の実証も無く、常に状況の違う雪質に最新ストラクチャーを合わせることは至難の業なのです。
最新ストラクチャーばかりにとらわれすぎて、連動してはじめて効果を発揮するワックスがないがしろになってるのも事実です。
ストラクチャーは、水分の多いときや、少ないとき用など無数のパターンが考えられます。
一般的に日本の雪は水分が多いため、クロスストラクチャーと呼ばれるものを施すことが主流ですが、溝の深さ、大きさなどはマシーンを操るオペレーターがいかに雪を理解しているかに掛かってきます。


次に、滑走面のケバ立ちとワックスの関係ですが、先のエッジのところで述べた、雪は固い結晶の集まりとゆうところで、エッジのみならずポリエチレンから出来ているやわらかい滑走面も結晶によって研磨されています。
そして結晶の上を滑ることにより、少なからずとも滑走面にはケバ立ちが起こってきます。
よく目にする黒い滑走面が白くなって見えるのは、ケバ立ちなのです。
滑走面にケバ立ちが多ければ多いほど、雪の結晶にこの毛羽が絡みつき滑走性は落ちます。
このような状態のときは、雪温の高い時用のやわらかめのワックスを塗ることにより、ケバ立ちを落ち着かせ、潤いある滑らかな滑走面に作り上げることが出来ます。
たとえれば、パサパサの髪の毛にトリートメントをしてしっとりさせる事と同じように思って下さい。


最後に滑走面の汚れとワックスの関係ですが、これは雪上にある塵や、ほこり、油などが滑走中に発生する静電気で滑走面に吸い上げられ、滑走効果を低下させてしまいます。
髪の毛を下敷きでこすると、髪の毛が逆立つのと同じ原理です。
この現象は、湿度が関係していて空気や雪が乾燥しているときに起こりやすくなります。
湿度が低いと、滑走中滑走面が静電気をおびてしまい、雪上の汚れを吸い付かせ、その汚れが雪の結晶に食いつき、滑走性を低下させてしまいます。
このような場合は、静電気を抑える効果のあるグラファイト系のワックスを塗ると有効となります。


以上エッヂを研ぐワックスを塗るという作業を行う上で知っておかなくてはならない事柄を説明しました。
スキーというスポーツは自然を相手にしています。
自然という刻々と変化する状況に合わせていくことが理想となりますが、限られた時間の中で自分なりにスキーを作り上げる作業を行うには、やはりこれだけの知識は持ち合わせていて欲しいと思います。



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